「組」

白川静『常用字解』
「形声。音符は且。組紐のことで、説文に“綬(くみひも)の属なり” という」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴があるが、本項では会意的に説明できず、字源を放棄している。
会意とはAの意味とBの意味を足した「A+B」をCの意味とする手法である。一方、形声の説明原理とは言葉の深層構造を究明し、コアイメージから意味を説明する方法である。
組は且にコアイメージの源泉があり、言葉の根源に関わる重要な部分である。では且のコアイメージとは何か。
字源の前に語源の究明が先立つ必要がある。語源の前にその語が具体的文脈でどんな意味に使われているかを確かめるのが先決である。組は古典に次の用例がある。
①原文:有力如虎 執轡如組
 訓読:力有ること虎の如く 轡を執ること組の如し
 翻訳:力は虎のように強く 手綱さばきは組紐を編むような鮮やかさ――『詩経』邶風・簡兮
②原文:孑孑干旟 在浚之都 素絲組之
 訓読:孑孑ケツケツたる干旟カンヨ 浚の都に在り 素糸もて之を組む
 翻訳:ぽつんと立つ旗竿が 浚の町に現れた 白糸で編んだ房飾りも鮮やかに――『詩経』鄘風・干旄

①は何本かの太い糸で編んだ紐(くみひも)の意味、②はくみひもを編む意味である。これを古典漢語ではtsag(呉音でス、漢音でソ)という。これを代替する視覚記号しとして組が考案された。
組は「且シャ・ショ(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。且は一段一段と上に重なっていることを示す象徴的符号である(855「且」を見よ)。これは「いくつかのものが重なり合う」というイメージにも展開する。したがって組はいくつかの糸を重ね合わせて編む状況を暗示させる。この図形的意匠によって上の①②の意味をもつtsagを表記した。
糸を重ね合わせて紐を作ることから、いくつかの部分を重ね合わせて一つにまとめる意味を派生する。これが組織・組閣の組(組み立てる)である。