「双」
正字(旧字体)は「雙」である。

白川静『常用字解』 
「会意。雔しゅうと又とを組み合わせた形。隹は鳥。雙は二羽の隹とりを手(又)に持つ形で、“ならぶ、そろい、ふたつ”の意味となる」

[考察]
字形から意味を引き出すのが白川漢字学説の方法である。雔(二羽の鳥)+又(手)→二羽の鳥を手で持つ→ならぶ・そろい・ふたつという意味を導く。
白川漢字学説には言葉という視点がなく、字形に意味があるという学説である。
意味とは何か。言葉の意味であることは言語学の定義である。意味を知るには言葉の使われる文脈がなくては知りようがない。まず古典における雙の用例を見、そこから意味を捉えるべきである。
①原文:葛屨五兩 冠綏雙止
 訓読:葛屨は五両 冠綏は双(ふた)つ
 翻訳:クズ布の靴は五足 冠の紐は二組――『詩経』斉風・南山
②原文:生而長大、美好無雙。
 訓読:生まれながらにして長大、美好双無し。
 翻訳:生まれつき背が高く、この上なくハンサムだ――『荘子』盜跖

①は二つで一組になったもの(ペア、カップル)の意味、またそれを数える助数詞、②は二つ並ぶ意味である。これを古典漢語ではsŭng(呉音でソウ、漢音でサウ)という。これを代替する視覚記号しとして雙が考案された。
sŭng(雙)は相・疋ショ(疎・礎・婿)などと同源である。これらは「二つに分かれる」というイメージがある。図示すると▯-▯ の形で、これは「二つ並ぶ」というイメージでもある。疋は足の形態を捉えた語で、▯-▯ の形のイメージがはっきりしている。婿は▯-▯ の形に女とカップルをなす男(むこ)の意味である。これと同じように▯-▯ の形にカップルをなすことをsŭng(雙)というのである。
次に語源を押さえた上で字源を見る。雙は「雔(二羽の鳥)+又(手)」を合わせて、二つ並ぶ鳥を持つ情景を設定した図形。この図形的意匠によって上記の①②の意味をもつsŭngの表記とした。
漢字は「字形→意味」の方向ではなく、「意味→字形」の方向に見るのが正しい見方である。