「送」

白川静『常用字解』
「形声。音符は关そう。关は両手でものを奉じ、捧げる形で、“おくりものをおくる、おくる”の意味がある。关は送のもとの字である」

[考察]
形声も会意として説くのが白川漢字学説の特徴である。 关は両手でものを捧げる→贈り物をおくるという意味になったという。
まず古典での送の用例を見てみよう。
①原文:期我乎桑中 要我乎上宮 送我乎淇之上矣
 訓読:我と桑中に期し 我を上宮に要(むか)へ 我を淇の上に送る
 翻訳:私と桑畑でデートし 森の小屋に向かえ入れ 淇の岸辺まで見送った――『詩経』鄘風・桑中
②原文:齊人送之書。
 訓読:斉人之に書を送る。
 翻訳:斉の人が彼に手紙を送った――『春秋左氏伝』文公十五年
③原文:吾聞富貴者送人以財、仁人者送人以言。
 訓読:吾聞けり、富貴なる者は人に送るに財を以てし、仁人なる者は人に送るに言を以てす。
 翻訳:金持ちは人に金を贈るが、仁者は言葉を贈るそうだ――『史記』孔子世家

①は出かける人を見送る意味、②は人や物をある地点まで運ぶ意味、③は贈り物を贈る意味で使われている。これを古典漢語ではsungという。これを代替する視覚記号しとして送が考案された。
語源については愈樾(近代の文献学者)が、『詩経』にある「縦送」(矢を放つ)という語に対して、「送は縦なり」と注釈したのが参考になる。縦は「縦にまっすぐ延びる」というイメージがあり、縦送は縦の方向にまっすぐ延びて、手元から離れていくという意味である。したがって送は前方へ人を放しておくり出すという意味である。これが①の意味。②と③はこれから派生した意味である。
次は字源を見る。送は「关+辵」を合わせたもの。关は篆文では灷になっている。金文に遡ると「午+廾」になっている。午は杵の形、廾は両手である。したがって关は杵を両手で持ち上げる情景である。ただしそんな意味を表すのではなく「持ち上げる」「上に上げる」というイメージを示す記号となり、朕にも含まれている。关の音は以証切(ヨウ)であるから、sungと音のつながりがあるのかはっきりしない。送は「关(イメージ記号)+辵(限定符号)」と解析しておく。辵は進行・歩行と関係があることを示す限定符号。したがって送は何かの上に持ち上げて(あるいは乗り物に乗せて)前方へおくり出す情景を設定した図形である。この図形的意匠によって上の①の意味をもつsungを表記した。
白川は③を最初の意味としているが、意味の論理的な展開を考えると、①→②→③という歴史的な出現順序と合致する。