「窓」

白川静『常用字解』
「形声。古い字形の𡆧・囱・窗はみな窓の形で象形の字。窓は窗を省略した字で、音符は囱とすべきであろう。説文は囱を正字とし、窓枠のある天窓をいう。窓は“まど”の意味に用いる。心を加えたのは聡明の意味であろうが、その意味に用いることはない」


[考察]
窓の分析を誤っている。「窗+心」に分析し、「聡明の意味であろうが、その意味に用いることはない」という。本当は「穴+悤」と分析すべきである。聡明では「まど」と結びつかないので、囱から説明し、天窓→「まど」の意味とした。
字体は囱→窗→窻→窓と変わった。順を追って説明する。
囱は櫺子窓を描いた図形。古代には空気という考えはないが、宇宙に充満する気という概念はあった。気が家屋内にも出入りするという考えは当然あったはずである。窓の役割は光を採るだけではなく、気(空気に読み換える)を入れる働きである。「まど」を古典漢語ではts'ŭng(呉音でソウ、漢音でサウ)という。藤堂明保によれば、この語は従・縦と同源で、「縦に抜け出る」という基本義があるという(『学研漢和大字典』)。「スムーズに通り抜ける」というコアイメージと言い換えてよい。空気が通り抜けるものが囱である。空気は小さな穴に集中するから、「通り抜ける」のイメージは「一所にまとまって通る」というイメージにも転化する。
窗は「囱ソウ(音・イメージ記号)+穴(限定符号)」と解析する。空気が通り抜ける穴を暗示させた図形。
窻は「悤ソウ(音・イメージ記号)+穴(限定符号)」と解析する。悤は「囱(音・イメージ記号)+心(限定符号)」に分析する。囱は「通り抜ける」というイメージ。心の中を何かが通り抜けていく感じを暗示させる。悤は怱に変形し、そわそわして慌ただしいという意味が実現される(怱卒の怱)。この語のコアにも「通り抜ける」というイメージがある。したがって窻は空気が通り抜ける穴を暗示させた図形。
悤は忩にも変化する(怱と忩は悤の俗字)。これに倣って窻も窓に変化した。