「装」
正字(旧字体)は「裝」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は壯(壮)。衣裳の外形を整えることを装といい、“よそおう”の意味となる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では壯から会意的に説明できず、字源を放棄している。
まず裝の用例を見る。
 原文:裝其輕寶珠玉。
 訓導:其の軽宝珠玉を装ふ。
 翻訳:その宝石や玉を身につけた――『史記』越王勾践世家
装は衣服などを着けて身形を整える意味で使われている。これを古典漢語ではtsïang(呉音でシヤウ、漢音でサウ)という。これを代替する視覚記号しとして裝が考案された。
裝は「壯(音・イメージ記号)+衣(限定符号)」と解析する。壯については1114「壮」で述べているが、もう一度振り返る。壯は「爿ショウ(音・イメージ記号)+士(限定符号)」と解析する。爿はベッドの形である。しかし実体に重点があるのではなく、形態・機能に重点がある。ベッドは人体に合うように造られており、「細長い」というイメージを表しうる。このイメージは「細い」「長い」「高い」「大きい」などのイメージにも展開する。また美的感覚としてはほっそりとしたイメージから、「スマートである」「スリムである」というイメージも生じる。壯もこれらのイメージを表わすことができる。かくて裝は衣服を着てスマートに身形を整える情景を設定した図形である。
上記の意味から、外形を整える意味(塗装の装)、外形を飾ってそれらしく見せる意味(扮装の装)、道具などを調えて準備する意味(武装の装)などに展開する。