「繰」

白川静『常用字解』
「形声。音符は喿そう。説文に“帛の紺の色の如きものなり” とあり、紺や濃紺の布をいうのがもとの意味である。繰繭・繰糸のように“くる”の意味に用いる」

[考察]
形声の説明原理がなく会意的に説くのが白川漢字学説の特徴であるが、本項では会意的な説明ができず、字源を放棄している。
繰には二つの言葉が同居している。つまり違った意味の言葉が同じ字形になっている。一つは紺色の帛、もう一つは「くる」という動詞である。前者は用例がないのでこれ以上言うべきことがない。普通は後者の意味に使われ、次の用例がある。
 原文:王后親繰其服。
 訓読:王后親(みづか)ら其の服を繰る。 
 翻訳:きさきは自分で糸を繰って衣服を作る――『国語』楚語
繰は繭から糸を引き出す(糸を繰る)の意味である。これを古典漢語ではsɔg(呉音・漢音でサウ)という。これを代替する視覚記号しとして繰が考案された。
繰は「喿(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。喿は「表面をかすめる」というイメージがある(1142「操」を見よ)。繰は繭の表面をかすめて生糸を手元にたぐり寄せて取る情景を設定した図形。