「藻」

白川静『常用字解』
「形声。音符は喿。説文に正字を薻とし、音符は巢。喿は多くの口(ᄇで、祝詞を入れる器の形)を木につけ、神に捧げて噪がしく祈ることをいう。巣は木の上の鳥の巣に雛の首が三つ並んでいる形。ともに多いの意味がある。藻とは水面をおおう“も(水草)”をいう」

[考察]
字形の分析に問題がある。水が抜けている。音符は澡であろう。 また喿と巣に「多い」の意味があるというが、そんな意味はないし、「多い」と「水面をおおう」との関係も分からない。不十分な字源説である。
藻の用例を見てみよう。
 原文:于以采藻 于彼行潦
 訓読:于(ここ)に以て藻を采る 彼の行潦コウロウに
 翻訳:ほら水草を摘もうよ あの道のにわたずみで――『詩経』召南・采蘋
藻は水草の意味である。これを古典漢語ではtsog(呉音・漢音でサウ)という。これを代替する視覚記号しとして藻が考案された。
藻は「澡(音・イメージ記号)+艸(限定符号)」と解析する。澡は「喿(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と分析する。喿は「表面に浮き上がる」「表面をかすめる」というイメージがある(1142「操」を見よ)。澡は体の表面(肌)の垢をかすめ取るようにして洗うことを表す(実現される意味は「あらう」)。この語にも「表面に浮き上がる」というイメージがある。したがって藻は葉が表面(水面)に浮き上がる草を暗示させる図形である。上の文献の注釈に「浮くものを藻という」とあるが、一般に水中に生える草をtsogといい、藻で表記するのである。