「像」

白川静『常用字解』
「形声。音符は象。説文に“似るなり”とあり、また“読みて養字の養の若くす”とあるから、養の音があり、そのほうが本音であったのであろう。養は様と同音であるから、像は“様子、かたち、すがた”の意味となる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなくすべて会意的に説くのが特徴である。しかし本項では象から会意的に説明できず、様から説明している。像は戦国時代、様は漢代以後に現れる字であるから、様から意味を導くのは時代本末転倒である。
像の古典における用例を見てみよう。
 原文:馮翼惟像 何以識之
 訓読:馮翼ヒョウヨクとして惟(ただ)像のみ 何を以て之を識らん
 翻訳:[宇宙の始めは]もやもやした形があるだけ 何で知れよう――『楚辞』天問
像はすがた・かたちの意味で使われている。これを古典漢語ではziang(呉音でザウ漢音でシヤウ)という。これを代替する視覚記号が像である。
像は「象(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。象については910「象」で述べている。象は動物のゾウを描いた図形である。ゾウの形態的特徴から「大きく目立つ姿」というイメージを捉え、これも同じ音で呼び、同じ図形で表される。かくて象の一字にゾウの意味と、「物の姿・形」の意味がある。後に後者の意味に専用するため、「象(音・イメージ記号)+人(限定符号)」を合わせた像が作られた。現在では象と像が使い分けられている。