「憎」
正字(旧字体)は「憎」である。
白川静『常用字解』
「形声。音符は曾。説文に“悪にくむなり”とあり、“にくむ” の意味に用いる」
[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴である。しかし本項では曾から会意的に説明できず、字源を放棄している。
憎は語史が非常に古く、次の用例がある。
原文:會且歸矣 無庶予子憎
訓読:会ひて且(しばら)くして帰らんとす 庶(ねが)はくは予が子に憎まるること無からん
翻訳:会ってすぐに別れのつらさ どうかお前に嫌われないよう――『詩経』斉風・鶏鳴
憎はにくむの意味である。これを古典漢語ではtsәng(呉音・漢音でソウ)という。これを代替する視覚記号しとして憎が考案された。
悪(オと読む)もにくむ意味であるが、憎とはイメージが違う。悪はある感情が心の内部に押さえつけられてわだかまり、捌け口がなく、むかむかするような気分というイメージであるが、憎は悪感情が心の内部で積み重ねって、つくづくいやになるような気分というイメージである。
憎は「曾(音・イメージ記号)+心(限定符号)」と解析する。曾は「上に重なる」というイメージがある(1150「増」を見よ)。憎はいやな感情が心の中に積み重なる情況を暗示させる図形である。
正字(旧字体)は「憎」である。
白川静『常用字解』
「形声。音符は曾。説文に“悪にくむなり”とあり、“にくむ” の意味に用いる」
[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴である。しかし本項では曾から会意的に説明できず、字源を放棄している。
憎は語史が非常に古く、次の用例がある。
原文:會且歸矣 無庶予子憎
訓読:会ひて且(しばら)くして帰らんとす 庶(ねが)はくは予が子に憎まるること無からん
翻訳:会ってすぐに別れのつらさ どうかお前に嫌われないよう――『詩経』斉風・鶏鳴
憎はにくむの意味である。これを古典漢語ではtsәng(呉音・漢音でソウ)という。これを代替する視覚記号しとして憎が考案された。
悪(オと読む)もにくむ意味であるが、憎とはイメージが違う。悪はある感情が心の内部に押さえつけられてわだかまり、捌け口がなく、むかむかするような気分というイメージであるが、憎は悪感情が心の内部で積み重ねって、つくづくいやになるような気分というイメージである。
憎は「曾(音・イメージ記号)+心(限定符号)」と解析する。曾は「上に重なる」というイメージがある(1150「増」を見よ)。憎はいやな感情が心の中に積み重なる情況を暗示させる図形である。
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