「贈」
正字(旧字体)は「贈」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は曾。曾は甑の形で、湯釜の上に食材を入れた蒸し器を重ねたもので、重ねるの意味がある。それで余分に贈るものを贈といい、“おくる” の意味に用いる」

[考察]
贈に「余分に贈るもの」という意味はない。だいたい「余分に贈る」とはどういうことか。AのほかにBが重なることを「余分」と見たのであろうか。
贈は語史が古く、次の用例がある。
 原文:伊其相謔 贈之以勺藥
 訓読:伊(こ)れ其れ相謔(たはむ)れ 之に贈るに勺薬を以てす
 翻訳:[男と女は]戯れ合って 彼女にシャクヤクを贈る――『詩経』鄭風・溱洧
贈は物を人にあげる(おくる)の意味である。これを古典漢語ではdzәng(呉音でザウ、漢音でサウ)という。これを代替する視覚記号しとして贈が考案された。
贈は「曾(音・イメージ記号)+貝(限定符号)」と解析する。曾は「上に重なる」というイメージがある(1150「増」を見よ)。貝は財貨(値打ちのあるもの)に関係があることを示す限定符号である。したがって贈は相手の手の上に値打ちのある物を重ねて加える情景を設定した図形である。この図形的意匠によって上記の意味をもつdzәngを表記した。