「続」
正字(旧字体)は「續」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は𧶠とく。𧶠は𧷏とくの省略形で贖しょくの音がある。続は糸が連続することをいう字である」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では𧶠から会意的に説明できず字源を放棄している。
なお𧶠にはトクの音もショクの音もない。余六切(イク)の音である。𧶠は賣(売の旧字体)とは別。
続は小学4年、読は2年で学習する字であるが、字形が複雑難解で、教えるのが難しい。まずは続の用例を古典で見る。
①原文:續古之人
 訓読:古の人を続(つ)ぐ
 翻訳:昔の人のあとを継いでいく――『詩経』周頌・良耜
②原文:鳧脛雖短、續之則憂。
 訓読:鳧の脛は短しと雖も、之を続(つ)がば則ち憂へん。
 翻訳:カモのすねは短いといっても、継ぎ足したら悲しむだろう――『荘子』駢拇

①は次々につながる(筋が通るように次々につなぐ、後に引き継ぐ)の意味、②は前のものの後につなぐ(AにBをつなぐ)の意味である。これを古典漢語ではziok(呉音でゾク、漢音でショク)という。これを代替する視覚記号しとして續が考案された。
續は「𧶠イク(音・イメージ記号)+糸(限定符号)」と解析する。𧶠を分析すると「𡍬+貝」となる。𡍬を分析すると「圥+囧」、圥を分析すると「屮+六」となる。
六→圥→𡍬→𧶠→續と発展して造形された。𡍬は親睦の睦の異体字(古文の字体)である。音は、六(ロク)、圥(ロク)、𡍬(ボク)、𧶠(イク)、續(ゾク)と変わるが、変わらないのはコアイメージである。
どんなイメージか。六は陸の原字で、「盛り上がる」というイメージがあるが(「六」で詳述)、もう一つのイメージは「次々につながる、続く」というイメージである。図示すると▯-▯-▯-▯-の形である。陸続という言葉によく現れている。
圥は「六(音・イメージ記号)+屮(草に関わる限定符号)」を合わせて、陸の右側の坴リクを構成し、草が次々に連なる土地、あるいは次々に続く陸地を暗示させる。
𡍬は「圥ロク(音・イメージ記号)+囧(イメージ補助記号)」を合わせたもの。圥は「次々に続く」のイメージから「次々に寄り集まる」「集まって次々に続く」というイメージに転化する。囧は明かり取りの窓の形で、「明るい」というイメージを添える記号(明の異体字「朙」に含まれている)。𡍬は人が寄り集まって明るい雰囲気を作る情景を設定した図形。親睦の睦(むつむ、むつまじい)の意味を表す。
𧶠は「𡍬ボク(音・イメージ記号)+貝(限定符号)」と解析する。𡍬は「次々に寄り集まる」というイメージがある。𧶠は商品を集めて取り引きする状況を暗示させる図形。鬻イク(ひさぐ)と同音同義である。「ひさぐ」(売る、あきなう)という行為は、商品がAのもとに集まり、A→B→Cという具合に流通していく。「流通する、次々に通る」というイメージが𧶠(=鬻)の根底にある。
續は𧶠に限定符号の糸を添えたもの。𧶠は「▯-▯-▯の形に次々に通っていく、つながっていく」というイメージがある。限定符号は意味領域を指定するほかに、図形的意匠作りのための場面設定の働きもある。糸に関する場面が設定され、續は▯-▯-▯の形に次々に糸をつないでいく状況を暗示させる。この図形的意匠によって上の①の意味をもつziokを表記した。
続は「▯-▯-▯の形に次々につながる」がコアイメージであるが、▯-▯の部分の焦点を置くと、AにBをつなぐという意味にもなる。これが上の②である。