「駄」

白川静『常用字解』
「形声。もとの字は馱に作り、音符は大。のち駄の形が用いられる。馬の背に荷物を“のせる” の意味に用いる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では大から会意的に説明できず、字源を放棄している。
馱(=駄)は漢代(たぶん後漢)以後に現れる比較的新しい字である。次の用例がある。
 原文:驢四百頭負馱。
 訓読:驢四百頭、馱を負ふ。
 翻訳:四百頭のロバが荷物を背負う――『東観漢記』巻十一
馱は家畜が背負う荷物の意味で使われている。当時の言葉でda(呉音でダ、漢音でタ)という。これを代替する視覚記号として最初は馱、後に駄が考案された。
馱は「大(音・イメージ記号)+馬(限定符号)」と解析する。大は「ゆったりと大きい」のイメージがある。形のイメージは量にも転用でき、「たっぷりと多い」というイメージになる。馱は馬がたっぷりと荷物を背負う状況を暗示させる。 字体が大から太に変わったが、太にも「たっぷりある」というイメージがある(1183「太」を見よ)。
日本では駄馬(荷物を運ぶ馬)は乗馬よりも劣るとされ、駄に「粗雑、下等」のイメージが付与された。だから駄目。駄作などの用法が生じた。