「滞」
正字(旧字体)は「滯」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は帶。帶は帯に巾(儀礼用の前かけ)をつけている形。説文に“凝とどこほるなり”とあり、途中でつかえて先に進まないことをいう。帯をしめたように、水が一か所に停滞することを滞という」

[考察]
形声も会意的に説くのが白川漢字学説の特徴である。滞は帯をしめたように水が一か所に停滞する意味だという。
古典に滞の用例を見てみよう。
①原文:此有滯穗 伊寡婦之利
 訓読:此(ここ)に滞穂有り 伊(こ)れ寡婦の利
 翻訳:落ちている稲穂は やもめの取り分――『詩経』小雅・大田
②原文:三宿而後出晝、是何濡滯也。
 訓読:三宿して後昼に出づ、是れ何ぞ濡滞なるや。
 翻訳:三泊してから昼に出発するとはぐずぐずしてはいませんか――『孟子』公孫丑下

①は一所にじっと止まって動かない意味、②は物事や事態の進行が止まってはかどらない意味である。これを古典漢語ではdiad(呉音でダイ、漢音でテイ)という。これを代替する視覚記号しとして滯が考案された。
滯は「帶(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と解析する。帶は「横に長く延びている」というイメージがあるが(1191「帯」を見よ)、一方では腰の回りに巻きついている形状から、「一所に取りついて動かない」というイメージもある。また空間的イメージは時間的イメージにも転用できる。水は水に関わる限定符号。限定符号は意味領域を指定するほかに、図形的意匠を作るための場面設定の働きがある。滯は水が一所に止まって長引いて動かない情景を設定した図形。この意匠によって上の①②の意味をもつdiadを表記した。
滞の意味は水とも帯とも関係がない。