「態」

白川静『常用字解』
「形声。音符は能たい。能は古くは耐と同音であった。荀子に“人の態には備ふるに如かず”とあって、態には擬態(似せること。まね)、態わざと装うの意味がある」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くの特徴であるが、本項では能から会意的に説明できず、字源を放棄している。
まず古典の用例を見よう。
①原文:人主欲見則群臣之情態得其資矣。
 訓読:人主、欲見(あらは)るれば則ち群臣の情態其の資を得。
 翻訳:君主が欲望の色を現すと、群臣の態度は材料を手に入れたことになる――『韓非子』二柄
②原文:余不忍爲此態也
 訓読:余此の態を為すに忍びざるなり
 翻訳:私はこんな不様な姿を見せるに忍びない――『楚辞』離騒

①は心構え、身構えの意味、②は表面に現れた姿・形の意味である。これを古典漢語ではt'әg(呉音・漢音でタイ)という。これを代替する視覚記号しとして態が考案された。
態は「能(音・イメージ記号)+心(限定符号)」と解析する。能は「何かをするのに耐えられる粘り強い力」というイメージがある。態は粘り強く何かをしようと構えた心を暗示させる。この図形的意匠によって上の①の意味をもつt'әgを表記した。
態度の態は心構え・身構えの意味。これは精神的な要素が強いが、内部にあるものが外部に現れると見える形を取る。これが上の②の意味、形態・状態の態である。