「代」

白川静『常用字解』
「形声。音符は弋。弋はおそらくもと尗に作る字で、尗は戚(まさかり)の刃から白い光を放つ形。尗は呪器として祓い清める力があるとされた。この弋(尗)を人に加え、禍を祓い清めて他に移すことができると考えられたので、代は改めるの意味となり、改めることによって“いれかわる、かわる”の意味となり、“世代がかわる、よ”の意味に用いる」

[考察] 
字形の解剖にも意味の取り方にも疑問がある。「弋はおそらくもと尗に作る字」というが全くあり得ないことである。また尗が「まさかりの刃から白い光を放つ形」で呪具だというのもおかしい。さらに、禍を他に移す→改める→入れかわると意味を展開させるが、これらの間に必然的な関係があるのか疑わしい。
出発点がそもそも間違っているので、意味の解釈が理解し難くなっている。
古典の用例を調べるのが先決である。代は次の用例がある。
①原文:好是稼穡 力民代食
 訓読:是の稼穡を好み 民を力(つと)めしめて代はりて食ふ
 翻訳:君らは穀物が大好きで 民を働かせ民に代わって食っている――『詩経』大雅・桑柔
②原文:斯民也、三代之所以直道而行也。
 訓読:斯の民や、三代の直道にして行ふ所以なり。
 翻訳:今の民は三つの王朝において正しい政道で治められてきた民である――『論語』衛霊公

①は互いに入れかわる意味、②は親から子、王朝から王朝へと入れかわっていく期間の意味に使われている。これを古典漢語ではdәg(呉音でダイ、漢音でタイ)という。これを代替する視覚記号しとして代が考案された。
代は「弋ヨク(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。弋は「いぐるみ」という狩猟工具であるが、実体に重点があるのではなく形態・機能に重点がある。「いぐるみ」は矢に紐をつけて獲物を絡め取る工具である。巻きつけるという状態に焦点を合わせると「∞の形を呈する」というイメージが捉えられる。これは互い違いによじれた形である。ここから「二つのものがA⇄Bの形に互い違いに入れかわる」というイメージに展開する。かくて代は同じ場所(ポスト)に別の人と入れかわる状況を暗示させる図形と解釈できる。この図形的意匠によって上の①の意味をもつdәgを表記した。
意味はコアイメージによって展開する。「∞の形を呈する」「A⇄Bの形に入れかわる」が代のコアイメージである。「入れかわる」は空間的イメージだが時間的イメージに転用すると、A⇄Bの形が連続してA→B→C→Dのように継時的に移っていく。これが世代・時代のイメージである。上の②の意味はこれである。