「託」

白川静『常用字解』
「形声。音符は乇。乇は先端が伸びてものに寄りかかる草の葉の形であるが、宅・亳・託などからすると、草の葉による占いの方法を示す字であろう。託は占って神託を問い、神託を受けることから、“よせる、たよる、たのむ、かこつける” の意味に用いるのであろう」

[考察]
字形の解釈、意味の取り方に関する疑問は1205「宅」と共通である。乇に草の葉による占いを示す方法などといった意味はない。いったい「草の葉による占い」とは何のことか。これを根拠にした託の意味の取り方もおかしい。託に神託の意味があるわけはない。神託は「かこつける」の意味からの派生義に過ぎない。
古典における託の実例を見るのが先決である。
 原文:可以託六尺之孤。
 訓読:以て六尺の孤を託すべし。
 翻訳:[彼になら]幼く小さい子どもをあずけることができる――『論語』泰伯
託は他人にあずける意味で使われている。これを古典漢語ではt'ak(呉音・漢音でタク)という。これを代替する視覚記号しとして託が考案された。
宅は「乇タク(音・イメージ記号)+言(限定符号)」と解析する。乇については1205「宅」で述べたが、もう一度振り返る。乇は植物が地下に根を張り、地上に芽を出している姿である。植物が一(地面)の上に出ている状態に重点がある。これは安定している状態である。ここから「下地の上に乗っかって安定する」「ある物の上を身をあずけて落ち着く」というイメージを表しうる。したがって託は言葉で頼んで他人に身をあずける状況を暗示させる。この図形的意匠によって、人に頼んで何かをあずける意味をもつt'akを表記する。
他人に頼んであずけることが委託の託である。ここから「他の物事にこと寄せる」という意味を派生する。これが託宣や神託の託である。