「担」
正字(旧字体)は「擔」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は詹たん。説文には儋の字を出して、“何ふ”とあり、擔を俗字とし、担を略字とするが、のち多く擔の字を用いる。“かつぐ、になう、おう”の意味に用いる」

[考察]
白川漢字学説は形声も会意的に説くのが特徴であるが、本項では会意的に説明がつかず、字源を放棄している。
古典には次の用例がある。 
 原文:擔囊而趨。
 訓読:囊を担ひて趨る。
 翻訳:[泥棒は]袋ごと担いで逃げた――『荘子』胠篋
擔は荷物などをかつぐ意味である。これを古典漢語ではtam(呉音・漢音でタム)という。これを代替する視覚記号しとして擔が考案された。
擔は「詹セン(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析する。詹に語のコアイメージがあるが、どんなイメージか。『説文解字』には「詹は多言なり」と意味を説き、また『荘子』には「小言は詹詹センセンたり」という用例がある。これは「詰まらない言葉(言論)は何度も繰り返す」といった意味。詹のイメージは「多くのものが重なる」と捉えることができる。物が多く重なった状態だから、「(上から下に力が加わって)ずっしりと重い」「ずっしりと垂れ下がる」というイメージにも展開しうる。
詹の字源はどうなっているか。「⺈(=人)+厂(がけ、屋根)+八(分かれ出る符号)+言」と分析する。人が高い所に登って、下に向けて言葉を発する情景を設定した図形と解釈する。下に届かせるため何度も言葉を重ねて発する状況を暗示している。この図形的意匠によって「多くのものが重なる」というイメージを表しうる。上記の通り「↓の形に重く垂れ下がる」「ずっしりと重い」というイメージにも転化する。かくて擔の字源も見えてきた。手で持ち上げて肩に重い荷物を受け止める状況を暗示させている。これによって「かつぐ」「になう」の意味のtamを表記するのである。