「探」

白川静『常用字解』
「形声。音符は罙しん。罙は穴の中のものを火で照らして捜す形である。穴の中で火をかざしてものを捜すことを探という」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説く特徴がある。罙(穴の中のものを火で照らして捜す)+手→穴の中で火をかざしてのものを捜すという意味を導く。
字形の解釈をそのまま意味とするのが白川漢字学説の特徴である。「穴の中」「火をかざす」は余計な意味素である。
意味とは「言葉の意味」である。言葉の使われる文脈から意味を知ることができる。逆に文脈がなければ意味を知りようがない。字形から意味が出るわけではない。字形の解釈と意味は必ずしも一致しない。
探の用例を古典から見てみよう。
 原文:見不善如探湯。
 訓読:不善を見ては湯を探るが如くす。
 翻訳:良からぬことを見ると、熱湯を探る時あわてて引っこめるような具合にする――『論語』季氏
探は奥深くさぐりを入れる(手探りする)の意味で使われている。これを古典漢語ではt'әm(呉音でトム、漢音でタム)という。これを代替する視覚記号として探が考案された。
探は「罙シン(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と解析する。969「深」でも述べたがもう一度振り返る。罙は形が崩れたが、「穴+尤(曲げた手の形)+火」を合わせたもの。かまどの中に手を突っ込んで火をあしらう情景を設定した図形である。この意匠によって「奥深く入る」というイメージを表すことができる。探は奥深く手を入れてさぐる情景を暗示させる。この図形的意匠によって上記の意味をもつt'әmを表記した。