「弾」
正字(旧字体)は「彈」である。

白川静『常用字解』 
「形声。音符は單(単)。甲骨文字の字形には、弓の弦の中間に〇を加えて弾丸をはじく形の字があり、弾丸をはじくの意味を示す。それで“はじく、うつ、たま、はじくたま”の意味 となる」

[考察]
甲骨文字から彈を解釈しているが、弦と見る説や禅と見る説もあり、「弾丸をはじく」の意味とは断定できない。それよりも彈の字源はどうなのか。白川は單からの会意的解釈ができないので、彈の字源を放棄している。
古典における彈の用例を見てみる。
①原文:捐彈而反走。
 訓読:弾を捐(す)てて反り走る。
 翻訳:はじき弓を捨てて、身を翻して逃げた――『荘子』山木
②原文:見彈而求鴞炙。
 訓読:弾を見て鴞炙キョウシャを求む。
 翻訳:はじき弓の弾を見て、フクロウの焼き肉を求める――『荘子』斉物論

①ははじき弓の意味、②ははじき弓のたまの意味で使われている。これを古典漢語ではdan(呉音でダン、漢音でタン)という。これを代替する視覚記号しとして彈が考案された。
はじき弓(弾弓)というのは球形のたまを飛ばして獲物を射る弓である。これを彈という。
字源は「單(音・イメージ記号)+弓(限定符号)」と解析する。單については1220「単」、1084「戦」で述べたがもう一度振り返る。單は獸にも含まれており、狩猟と関係がある。單は網に似た狩猟用具の図形である。ただし実体に重点があるのではなく、形態や機能に重点がある。網のような形態から「平ら」「薄く平ら」というイメージを表すことができる。薄いものはひらひら(ぶるぶる)と振動するから、「ひらひらと震え動く」というイメージに転化する。單はこのようなイメージを表す記号である。したがって彈は弦を震わせてたまをはじき飛ばす弓を暗示させている。これで上記の①と②の意味をもつdanを表記するのである。