「談」

白川静『常用字解』
「形声。音符は炎。説文に“語るなり” とあり、談笑・戯談のように、日常的な談話をいう。“かたる、はなす、はなし”の意味に用いる」

[考察]
談は「日常的な談話」の意味というだけで、字形から意味引き出すことができないので、 字源を放棄している。
古典における談の用例を見る。
 原文:憂心如惔 不敢戲談
 訓読:憂心惔(や)くが如し 敢へて戯談せず
 翻訳:胸を焼くようなわが憂い 冗談をいう気もしない――『詩経』小雅・節南山
談はしゃべる意味で使われている。これを古典漢語ではdam(呉音でダム、漢音でタム)という。これを代替する視覚記号しとして談が考案された。
談は「炎(音・イメージ記号)+言(限定符号)」と解析する。炎は淡にも使われている。 炎は火を二つ重ねた形で、「ほのお」を表す。しかし実体に重点があるのではなく形態・機能に重点がある。炎は火の先端がめらめらと揺れながら燃えることから、「薄っぺらなものがゆらゆらする」というイメージがある。「薄い」は視覚的イメージだが、淡では触覚や味覚のイメージに転用されている。味が薄いことを淡という。食べるという身体の動作に転用されることもある。薄っぺらな舌を動かして物を食べる行為を啖(くらう)という。談もまさにこれと似たイメージをもつ語である。薄っぺらな舌(あるいは唇)を動かしてしゃべる行為が談である。