「仲」

白川静『常用字解』
「形声。音符は中。説文に“中なり” とあるのは、兄弟の順序で仲の子の意味である」

[考察]
字源は明白。兄弟の序列で、中間に位置する順序のものを仲という。三段階の分類では伯(長男)、仲(次男)、叔(三男)、四段階の分類では伯、仲、叔、季(末子)である。三男、四男がいなくても次男を仲という。
なお白川は「国語では仲間のように、人間関係をいうときに用いる」といい、仲間の仲は日本語の用法と見るようである。 これは仲介・仲裁の仲も含めているのであろう。
確かに仲裁のような用法は古典漢語にはなさそうである。『漢語大字典』では「仲裁」「仲買」の用例を挙げているが、典拠として朱自清(近代中国の作家)の文章を出している。『漢語大詞典』では仲の意味記述に仲裁・仲介はない。『中国語大辞典』では仲裁を「日語」としている。仲裁・仲介などの用法は日本語からの逆輸入の可能性がある。
ではなぜ仲裁・仲介などの使い方が生じたのか。これは日本語の問題であるが、日本人が漢語の意味を展開させた好例と考えられる。中とは上下・左右のどちらにも片寄らない位置、すなわち真ん中の意味である。図示すると―・―の形。二つのものの中間である。A、Bという人がおり、これをA―Bという形につなげるなら、二人の間に人間関係が生じる。このように二人を引き合わせて取り持つことを仲というのである。これが仲介、仲裁である。仲間の仲も同じである。