「昼」
正字(旧字体)は「晝」である。

白川静『常用字解』
「会意。聿と日とを組み合わせた形。聿は筆を手(又)に持つ形。篆文は日の周囲に專が加えられているので、聿の下は暈の形ではないかと思われる。金文の形は下が日の形であるから、日に対する何らかの呪儀を示す字とみられる。日(太陽)の異変に対する祓いの方法であろうかと思われる」

[考察]
字形の解剖にも意味の取り方にも疑問がある。「日に対する何らかの呪儀」とはいったい何のこのか。「日の異変に対する祓いの方法」がなぜ「ひる」の意味になるのか。理解不能である。
また聿(筆)は何の役割があるのか。これの説明がない。「聿(筆)+日」から「ひる」の意味を導くのは無理である。
古人の解釈を見ると疑問が氷解する。『説文解字』に「晝は、日の出入、夜と界を為す。畫の省に従ひ、日に従ふ」とある。字形は「畫の略体+日」と分析する。昼は日の出から始まり、日の入りで終わる。次は夜である。昼と夜の境界を示す記号が晝だというのである。この解字は全く正当である。古典漢語における一日の時間帯の区分は朝・昼・夜の三区分である。朝の暗いうちはまだ日の出の前である。日が出てあたりが明るくなる頃から昼が始まる。日が入って暗くなる頃から夜になる。何時から何時までと決まっているわけではないが、日が出て明るくなり、人が活動する時間帯が昼という捉え方である。
晝という字に含まれる畫(区画の画)が、昼と夜との区切り目を示している。字源は「畫+日」なので、畫の説明をすれば晝の字源は完成する。では畫とは何か。これについては140「画」で説明している。もう一度振り返る。
畫の篆文は、上部に「聿」、その下に「田」、また「田」の左右と上下に四本の線(縦線と横線)がある。結局畫は「左右上下の線で区切る形(イメージ記号)+聿(イメージ補助記号)+田(限定符号)」と解析できる。聿は筆であり、筆は書いたり区切ったりする道具なので、イメージを補助するための記号となる。田は田に関する場面を作り出すための限定符号である。かくて畫は田の周囲に区切りをつける情景を設定した図形である。この意匠によって、周囲を区切るという意味をもつ古典漢語ɦuĕkを代替する視覚記号とする。(以上、140「画」の項)
平面を区切ることから拡大されて、線を区切ることも畫という。図示すると―|―の形である。これは空間的イメージだが、当然時間にも転用できる。日が出た後、日が入る時間を区切ると、昼|夜のように区切れる。夜は昼を挟んで両側にある時間帯という捉え方なので、夜|昼|夜のようにも区切れる。『説文解字』でいう「日の出入、夜を界と為す」とはこのような区切り方と考えてよいだろう。