「釣」

白川静『常用字解』
「形声。音符は勺。勺はひしゃくの形であるから、勺はもと刁の形であろう。釣針の形である。玉篇に“魚を釣るなり” という。“つる、つり”の意味に用いる」

[考察]
「勺はひしゃくの形であるから、勺はもと刁の形であろう」というのは意味不明。勺はひしゃくの形で、「つる」とは関係がないから、勺ではなく刁の間違いだろうという意味か。これは勝手な臆測である。
釣は語史が古く、周代初期の文献に現れている。刁の字が現れるのは漢代以後である。
 原文:籊籊竹竿 以釣于淇
 訓読:籊籊テキテキたる竹竿 以て淇に釣る
 翻訳:高々と竹竿を上げ 淇の川で魚を釣る――『詩経』衛風・竹竿
釣は魚をつる意味で使われている。これを古典漢語ではtög(呉音・漢音でテウ)という。これを代替する視覚記号しとして釣が考案された。
釣は「勺(音・イメージ記号)+金(限定符号)」と解析する。勺は770「勺」で説明したように「上に高く上げる」というイメージがある。図示すると↑の形。視点を上の方向から下の方向へ変えると↓の形になる。これは「上から下に垂れ下がる」というイメージでもある。つりをする行為は竿を持ち上げ、糸を下に垂らす。魚がかかったら上に高々と上げる。このようなイメージが同時に含まれている。だから勺という記号が選ばれた。またつりばりには金属製も登場していたと考えられる。だから限定符号を金とする。かくて魚をつることを意味するtögの表記として釣が工夫されたのである。
つりという行為から釣の成り立ちを説明するなら、誰でもこのような説明ができるはずだが、白川説ではそれができない。なぜかというと字形から意味を引き出そうとするのが白川説の方法論であり、形声の説明原理がなく会意的に説くのが白川説の特徴だからである。