「澄」

白川静『常用字解』
「形声。音符は登。字はもと澂に作り、説文に“澂は清むなり” とあり、水がすむの意味に用いる」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では会意的に説明できず、字源を放棄している。
なぜ「すむ」を意味する語に登や徵が使われているのか。これは言葉の深層構造を探らないと分からないだろう。言葉の深層構造のレベルに掘り下げ、語源的に意味を探求するのが形声の説明原理である。
「(液体などが)すむ」という現象を日本語では「曇りや濁りなど、気体・液体の中に浮遊する要素が沈静して、落ち着いた明るい状態になる意」(『古典基礎語辞典』)と捉える。内部にある要素が上から下へ移動するというイメージである。これに対して古典漢語では上方への移動として捉えられた。
澄は「登(音・イメージ記号)+水(限定符号)」と解析する。登は「上に上がる」というコアイメージをもつ。何が上に上がるのか。上澄みである。つまり濁りや汚れなどの要素を下に残して、上澄み(澄んだ部分)が上に上がるのが澄である。
一方、異体字に澂・瀓がある。徵は1293「徴」で説明したように「↑の形に伸び出ていく」「まっすぐ現れ出る」というコアイメージがある。登のコアイメージとほぼ同じと見てよい。上澄みが上にまっすぐ現れ出るというイメージで澂・瀓が造形された。