「電」
白川静『常用字解』
「会意。雨と申とを組み合わせた形。下部はもの申の形である。申は稲妻の形。申に雲・雷など気象を表す字につける雨をつけて電とし、“いなずま、いなびかり、いなびかりのようにはやい” の意味に用いる」
[考察]
962「神」の項では申を音符としている。神の上古音はdien、電の上古音はdenと推定されている。だから電も形声としてさしつかえない。
電は白川の言う通り「雨+申」に分析できる。申は甲骨文字では循環的序数詞である十二支の第九位を表す記号として用いられている。申の字源は古くから稲妻の象形文字とされている。これは定説となっている。しかし甲骨文字では稲妻という実体ではなく、その形態的特徴である「長く伸びる」というイメージが利用された(詳しいことは954「申」を見よ)。甲骨文字以後になって申は実体に着目されるようになり、二つのイメージが現れる。一つは稲妻という現象そのもの、もう一つは神格化である。
稲妻そのものを言語としてdenといようになった(申の音thienではないが、類似している)。これを表記するために申に限定符号の雨(気象と関係があることを示すメタ記号)を添えて電という図形が考案された。
最古の古典の一つである『詩経』(紀元前11世紀頃)に次の用例が見える。
原文:爗爗震電
訓読:爗爗ヨウヨウとして電震ふ
翻訳:稲妻がぴかっと光って震える――『詩経』小雅・十月之交
稲妻の意味が二千年以上も続く。近代になって西洋科学の登場後electricityの訳語として電が用いられるようになった。
白川静『常用字解』
「会意。雨と申とを組み合わせた形。下部はもの申の形である。申は稲妻の形。申に雲・雷など気象を表す字につける雨をつけて電とし、“いなずま、いなびかり、いなびかりのようにはやい” の意味に用いる」
[考察]
962「神」の項では申を音符としている。神の上古音はdien、電の上古音はdenと推定されている。だから電も形声としてさしつかえない。
電は白川の言う通り「雨+申」に分析できる。申は甲骨文字では循環的序数詞である十二支の第九位を表す記号として用いられている。申の字源は古くから稲妻の象形文字とされている。これは定説となっている。しかし甲骨文字では稲妻という実体ではなく、その形態的特徴である「長く伸びる」というイメージが利用された(詳しいことは954「申」を見よ)。甲骨文字以後になって申は実体に着目されるようになり、二つのイメージが現れる。一つは稲妻という現象そのもの、もう一つは神格化である。
稲妻そのものを言語としてdenといようになった(申の音thienではないが、類似している)。これを表記するために申に限定符号の雨(気象と関係があることを示すメタ記号)を添えて電という図形が考案された。
最古の古典の一つである『詩経』(紀元前11世紀頃)に次の用例が見える。
原文:爗爗震電
訓読:爗爗ヨウヨウとして電震ふ
翻訳:稲妻がぴかっと光って震える――『詩経』小雅・十月之交
稲妻の意味が二千年以上も続く。近代になって西洋科学の登場後electricityの訳語として電が用いられるようになった。