「突」
正字(旧字体)は「突」である。
白川静『常用字解』
「会意。犬は犠牲として供える犬。穴はこの字の場合は竈の穴(焚口)で、そこに犠牲の犬を供えて祀ることをいう。竈から煙を出すための竈突をいう。それで“つきでる、つく”の意味となる」
[考察]
突は「そこ(竈)に犠牲の犬を供えて祀る」の意味としながら、「竈から煙を出すための竈突」の意味とし、そこから「つきでる」の意味になったという。竈で犬を供えて祀ることと、煙突と何の関係があるのか。
「穴+犬」という舌足らず(情報不足)な図形から、「竈に犠牲の犬を供えて祀る」という意味を導くこと自体が突飛である。字形から出発すると何とでも解釈できる。言葉から出発しないと恣意的な解釈になりがちである。
言葉から出発し、意味を調べ、その後で字源を検討するのが正しい漢字理解の筋道である。突は古典に次の用例がある。
①原文:彘突出於溝中。
訓読:彘、溝中より突出す。
翻訳:豚が溝の中か突き出てきた――『韓非子』外儲説右下
②原文:未幾見兮 突而弁兮
訓読:幾(いうば)くもなくして見れば 突として弁せり
翻訳:しばらく会わないうちに あっという間に冠姿――『詩経』斉風・甫田
①は頭や先端が急に突き出る意味、②はある事態が急に出てくるさま(だしぬけ)の意味で使われている。これを古典漢語ではduət(呉音でドチ、漢音トツ)という。これを代替する視覚記号しとして突が考案された。
突は「穴+犬」と分析する。ありにも単純で情報不足な図形である。上記の意味をもつ言葉の表記だから、それに合うような解釈をすると、穴から犬が急に飛び出す情景と解釈できそうである。これなら①と②にうまく合う。穴も犬も意味とは何の関係もない。ただ図形的意匠を作るための場面設定に利用されただけである。
正字(旧字体)は「突」である。
白川静『常用字解』
「会意。犬は犠牲として供える犬。穴はこの字の場合は竈の穴(焚口)で、そこに犠牲の犬を供えて祀ることをいう。竈から煙を出すための竈突をいう。それで“つきでる、つく”の意味となる」
[考察]
突は「そこ(竈)に犠牲の犬を供えて祀る」の意味としながら、「竈から煙を出すための竈突」の意味とし、そこから「つきでる」の意味になったという。竈で犬を供えて祀ることと、煙突と何の関係があるのか。
「穴+犬」という舌足らず(情報不足)な図形から、「竈に犠牲の犬を供えて祀る」という意味を導くこと自体が突飛である。字形から出発すると何とでも解釈できる。言葉から出発しないと恣意的な解釈になりがちである。
言葉から出発し、意味を調べ、その後で字源を検討するのが正しい漢字理解の筋道である。突は古典に次の用例がある。
①原文:彘突出於溝中。
訓読:彘、溝中より突出す。
翻訳:豚が溝の中か突き出てきた――『韓非子』外儲説右下
②原文:未幾見兮 突而弁兮
訓読:幾(いうば)くもなくして見れば 突として弁せり
翻訳:しばらく会わないうちに あっという間に冠姿――『詩経』斉風・甫田
①は頭や先端が急に突き出る意味、②はある事態が急に出てくるさま(だしぬけ)の意味で使われている。これを古典漢語ではduət(呉音でドチ、漢音トツ)という。これを代替する視覚記号しとして突が考案された。
突は「穴+犬」と分析する。ありにも単純で情報不足な図形である。上記の意味をもつ言葉の表記だから、それに合うような解釈をすると、穴から犬が急に飛び出す情景と解釈できそうである。これなら①と②にうまく合う。穴も犬も意味とは何の関係もない。ただ図形的意匠を作るための場面設定に利用されただけである。