「描」
白川静『常用字解』
「形声。音符は苗。古い用例はなく、元代の六書故に“描と摹と声相近し” とあって、摸写するの意味であるという」
[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では苗から会意的に説明できず、字源を放棄している。
描は古典の用例はないが(唐代以前に出現)、漢字の造形原理に従って創作された字である。漢字の造形原理とは、言葉のイメージを図形に表すという方法である。描は「物の姿をえがく」という意味で使われ、苗と同音で呼ぶ。描は「苗(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析できる。苗は「なえ」であるが、実体ではなく形態・機能に重点が置かれる。苗は「小さい」「細い」「かすか」「かすかで見えない」というイメージがある(1566「苗」を見よ)。漢語では「見えない」「無い」というイメージから「無いものを求める」「見えないものを見える(はっきりと分かる)ようにする」というイメージに転化する現象(転義パターン)がある。まだはっきりしていない物の姿を、絵図に書くことによって、その物の姿をはっきり見えるようにすること、これを描という。言語や文字でもって表現する意味にも転じる。これが描写である。
白川静『常用字解』
「形声。音符は苗。古い用例はなく、元代の六書故に“描と摹と声相近し” とあって、摸写するの意味であるという」
[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では苗から会意的に説明できず、字源を放棄している。
描は古典の用例はないが(唐代以前に出現)、漢字の造形原理に従って創作された字である。漢字の造形原理とは、言葉のイメージを図形に表すという方法である。描は「物の姿をえがく」という意味で使われ、苗と同音で呼ぶ。描は「苗(音・イメージ記号)+手(限定符号)」と解析できる。苗は「なえ」であるが、実体ではなく形態・機能に重点が置かれる。苗は「小さい」「細い」「かすか」「かすかで見えない」というイメージがある(1566「苗」を見よ)。漢語では「見えない」「無い」というイメージから「無いものを求める」「見えないものを見える(はっきりと分かる)ようにする」というイメージに転化する現象(転義パターン)がある。まだはっきりしていない物の姿を、絵図に書くことによって、その物の姿をはっきり見えるようにすること、これを描という。言語や文字でもって表現する意味にも転じる。これが描写である。