「裸」
白川静『常用字解』
「形声。音符は果。もとの字は臝に作り、音符は𣎆。説文に“袒はだぬぐなり” とあり、“かたぬぐ”ことをいう。果は木の実をいい、人のはだかを倮といい、衣を脱いだ“はだか”を裸という」
[考察]
臝・裸は果(木の実)と何の関係があるのか、はっきりしない。また 「人のはだか」と「衣を脱いだはだか」に違いがあるのかもはっきりしない。これは意味なのか、字形の説明なのか。
白川は臝が裸の本字だというが、間違っている。臝は果臝カラの臝で、チョウセンカラスウリのことである。裸は𧝹の異体字である。
𧝹は「𣎆(ラ)(音・イメージ記号)+衣(限定符号)」と解析する。𣎆は驘の原字で、後の騾馬(ラバ)の騾である。これの形態的特徴から「ころころと丸い」「丸みを帯びている」というイメージを表す記号となる。尻が丸いジガバチを蠃(蜾蠃)という。カラスウリも丸みを帯びているので果臝という。ミソサザイはずんぐりとして丸みを帯びた小鳥なので鸁という。衣を脱いだときに現れる丸みを帯びた肌を𧝹という。
字体は𧝹から裸に変わった。裸は「果(音・イメージ記号)+衣(限定符号)」 である。果は一般に木の実のことで、その特徴は丸いというイメージである。だから「ころころと丸い」「丸みを帯びている」というイメージを表すことができる。あるいは「くだもの」と考えれば、「表面がすべすべしている」というイメージもありうる。衣は着物と関係があることを示す限定符号。限定符号は図形的意匠を作る場面設定の働きがある。人が衣を脱ぐ場面を設定し、衣を脱いで丸みを帯びた肩などが露わに現れ出る情景が仕立てられた。この意匠によって、衣を身につけず肉体を露わにした状態、つまり「はだか」を意味する古典漢語luar(呉音・漢音でラ)を表記した。
ちなみに古典の注釈に「裸は露なり」とあり、王力は裸と露を同源の語としている(『王力古漢語字典』)。
白川静『常用字解』
「形声。音符は果。もとの字は臝に作り、音符は𣎆。説文に“袒はだぬぐなり” とあり、“かたぬぐ”ことをいう。果は木の実をいい、人のはだかを倮といい、衣を脱いだ“はだか”を裸という」
[考察]
臝・裸は果(木の実)と何の関係があるのか、はっきりしない。また 「人のはだか」と「衣を脱いだはだか」に違いがあるのかもはっきりしない。これは意味なのか、字形の説明なのか。
白川は臝が裸の本字だというが、間違っている。臝は果臝カラの臝で、チョウセンカラスウリのことである。裸は𧝹の異体字である。
𧝹は「𣎆(ラ)(音・イメージ記号)+衣(限定符号)」と解析する。𣎆は驘の原字で、後の騾馬(ラバ)の騾である。これの形態的特徴から「ころころと丸い」「丸みを帯びている」というイメージを表す記号となる。尻が丸いジガバチを蠃(蜾蠃)という。カラスウリも丸みを帯びているので果臝という。ミソサザイはずんぐりとして丸みを帯びた小鳥なので鸁という。衣を脱いだときに現れる丸みを帯びた肌を𧝹という。
字体は𧝹から裸に変わった。裸は「果(音・イメージ記号)+衣(限定符号)」 である。果は一般に木の実のことで、その特徴は丸いというイメージである。だから「ころころと丸い」「丸みを帯びている」というイメージを表すことができる。あるいは「くだもの」と考えれば、「表面がすべすべしている」というイメージもありうる。衣は着物と関係があることを示す限定符号。限定符号は図形的意匠を作る場面設定の働きがある。人が衣を脱ぐ場面を設定し、衣を脱いで丸みを帯びた肩などが露わに現れ出る情景が仕立てられた。この意匠によって、衣を身につけず肉体を露わにした状態、つまり「はだか」を意味する古典漢語luar(呉音・漢音でラ)を表記した。
ちなみに古典の注釈に「裸は露なり」とあり、王力は裸と露を同源の語としている(『王力古漢語字典』)。