「販」

白川静『常用字解』
「形声。音符は反。説文に“賤きに買ひて、貴きに売る者なり”とあり、安い品物を買って高く売る“商売、あきない”の意味とする」

[考察]
白川漢字学説は形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では反から会意的に説明できず字源を放棄している。
反は1505「反」でも述べた通り「はね返る」というイメージがある。「←の形がはね返って→の形に向きを変える」というイメージである。←の方向が→の方向になることは⇄の形でもある。AとBの間で⇄の形にやり取りが行われるというのが販における反のイメージである。
販は「反(音・イメージ記号)+貝(限定符号)」 と解析する。反は上記のイメージを表す。貝は財貨や貨幣と関係があることを示す限定符号。したがって販は→の方向に物を求める(金銭を出す)ことに対し、←の方向に物を与える(商品を売る)状況を示している。販は商品を売るという意味である。