「碑」

白川静『常用字解』
「形声。音符は卑。説文に“豎てたる石なり”とあり、“いしぶみ(石碑)”をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では卑から会意的に説明できず、字源を放棄している。
碑は古典に次のように使われている。
 原文:既入廟門、麗于碑。
 訓読:既に廟門に入り、碑に麗(つ)く。
 翻訳:間もなく廟の門に入り、いけにえを碑に懸けた――『礼記』祭義
碑は廟(先祖を祭る建物)の前に立てる石の意味で使われる。功績などを文字に刻んで記念に立てる石(いしぶみ)はその転義である。
碑は「卑(音・イメージ記号)+石(限定符号)」と解析する。卑については1538「卑」で述べたように、扁平な酒器の図形で、「平らで薄い」というイメージを示す記号である。だから碑は人工的に薄く平らに削った石を表している。何に使うかは図形には反映されている。