「瓶」
正字(旧字体)は「甁」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は幷。水や酒を入れる“かめ”、また、水を汲むときに使う“つるべ” をいう」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴であるが、本項では幷から会意的に説明できず、字源を放棄している。
甁は古典に次の用例がある。
①原文:羸其甁。
 訓読:其の瓶ヘイを羸(やぶ)る。
 翻訳:井戸のつるべが壊れた――『易経』井
②原文:甁之罄矣 維罍之恥
 訓読:瓶ヘイの罄(つ)くるは 維(こ)れ罍ライの恥
 翻訳:おちょこが空になるのは 酒樽の恥――『詩経』小雅・蓼莪

①はつるべの意味、②は酒をつぐ小さなかめの意味に使われている。これを古典漢語ではbieng(呉音でビヤウ、漢音でヘイ)という。これを代替する視覚記号しとして甁が考案された。
甁は「幷(音・イメージ記号)+瓦(限定符号)」と解析する。幷は「从(二人)+二(並べる符号)」を合わせて、二人を並べる情景。「▯-▯の形に並べてあわせる」というイメージを示す。▯ー▯の形に並んでそろっているというイメージでもある。瓦はかわらけ(土器)と関係があることを示す限定符号。したがって甁は二つで組みになっている土器、つまり水汲み用の道具である「つるべ」を暗示させる図形である。この意匠は缶(罐)とほとんど同じ(208「缶」を見よ)。
②の意味は形態的類似性による転義である。 これからさらに転じて、とっくり型の容器の意味になった。これが花瓶の瓶である。