「矛」

白川静『常用字解』
「象形。長い柄のあるほこの形」

[考察]
字源説としてはその通りである。ただし「ほこの形だからほこの意味」というのは同語反復である。言葉が見えない。 なぜ「ほこ」をム(上古音はmiog)というのか、つまり語源がないと漢字の説明が完結しない。矛の深層構造を究明しないと務や霧を説明することができない。矛・務・霧は共通の深層構造をもつのである。
武器の名は形態や機能から命名されることが多い。長い柄があり、先端に突き刺す刃をつけ、敵をめがけて突進し、相手を突き刺す用途のある武器をmiogというのである。この語には「無理に突き進む」というイメージがあり、戊や冒と近いことばである。
矛のコアイメージを捉えることによって務や霧も説明できる。