「盲」

白川静『常用字解』
「形声。音符は亡。亡は手足を折り曲げている死者の骨の形であるが、仮借して、ない、なしの意味に用いる。目の視力を失った者を盲といい、“めしい”の意味に用いる」

[考察]
亡は死者の骨の形で、「ない」の意味は仮借だという。いったい何から何を借りたのか、分からない。
また、「ない」の意味から、「視力を失った者」という意味になったという。意味展開の説明が唐突である。 
古典で盲は次のように使われている。
 原文:五色令人目盲。
 訓読:五色は人の目をして盲ならしむ。
 翻訳:五色は人の目を見えなくさせる――『老子』第十二章
盲は目が見えないという意味で使われている。これを古典漢語ではmăng(呉音でミヤウ、漢音でマウ)という。これを代替する視覚記号しとして盲が考案された。
盲は「亡(音・イメージ記号)+目(限定符号)」と解析する。亡は1694「亡」で述べたように「見えない」というイメージを示す記号である。目は目と関係があることを示す限定符号。したがって盲は目が見えないことを暗示させる。この図形によってmăngの表記とした。