「類」
正字(旧字体)は「類」である。

白川静『常用字解』
「会意。米と犬と頁とを組み合わせた形。頁は儀礼のときの衣冠を整えた姿である。米と犠牲の犬を供え、礼装して拝む形が類で、天を祭る祭りの名である」

[考察]
『説文解字』に「犬に従ひ、頪の声」とあるように、頪という字が存在し、類はこれを音符とするというのが通説。しかし白川漢字学説には形声の説明原理がなく会意的に説くのが特徴で、本項では「米+犬+頁」の会意文字としている。しかも頁を「儀礼のとき衣冠を整えた姿」という特殊な解釈をするため、犬は犠牲の動物、米は供物となり、類は宗教用語と解釈される。確かに類は祭りの名という特殊な意味もあるが、その前に類は普通の言葉であった。古典における類の用例を見る。
 ①原文:貪人敗類
 訓読:貪人類を敗る
 翻訳:欲深い人が仲間を損なう――『詩経』大雅・桑柔
②原文:威儀不類
 訓読:威儀類せず
 翻訳:威儀はふさわしくない――『詩経』大雅・瞻卬
①は似た特徴をもつ仲間の意味、②はそれらしくよく似ている意味で使われている。 これを古典漢語ではliuəd(liui。呉音・漢音でルイ)という。これを代替する視覚記号として類が考案された。
類は「頪ルイ(音・イメージ記号)+犬(限定符号)」と解析する。頪について朱駿声は「頁に従ひ米の声。相似て分別し難きを謂ふ」(『説文解字通訓定声』)と述べ、段玉裁は「頪・類は古今の字」(『説文解字注』)と述べている。
頪は「米(イメージ記号)+頁(限定符号)」と解析する。米は「こめ」の意味だが、実体に重点があるのではなく形態に重点がある。米は小さな粒状をなすから、「細かく分散する」というコアイメージがある。このイメージは「細かくて見分けがつかない」というイメージにも転化する(1760「迷」を見よ)。頁は頭部や人体、また人に関係があることを示す限定符号。したがって頪は紛らわしいほど似ていて見分けがつかない者同士を暗示させる。犬は比喩的限定符号である。頪にこの限定符号を添えて、犬のように互いに似ていて区別がつかないもの、あるいは特徴のよく似た仲間同士を暗示させる。この意匠によって上記の①②の意味をもつliuədを表記した。
白川は類を祭りの名とするため、なぜ種類や類似の類の意味になるのか説明できない。仮借説を取るほかはないだろう。