「位」

白川静『常用字解』
「会意。立は大(両手を広げて立つ人)と一とを組み合わせた会意の字で、人が一定の場所に立つ形であり、その立つ場所を位といい、‘くらい’ の意味に用いる。立が位のもとの字であるが、のち位を使うようになった」

[考察]
形に意味があるというのが白川漢字学説の根幹。その結果、形の解釈と意味が混同される。位は人と立の組み合わせだから、人が立つ場所の意味だという。果たしてそうか。古典で位は次のように使われている。
①原文:孝孫徂位 工祝致吿
 訓読:孝孫位に徂(ゆ)き  工祝告を致す
 翻訳:孝孫(先祖を祭る子孫)が席に進むと 神主はお告げをもたらす――『詩経』小雅・楚茨
②原文:不患無位、患所以立。
 訓読:位無きを患へず、立つ所以を患ふ。
 翻訳:地位が無いのは気にしないが、どうしてそれに就いたかを気にする―― 『論語』里仁

①は定められた座席の意味、②は官職における地位・身分の意味で使われている。比喩的に言えば立つ場所かもしれないが、文字通りに人が立っている場所という意味ではない。
白川は位のもとの字は立だという。確かに立が使われた文脈もあるが、この場合の立は古典漢語のliəpを表記しているのではなく、ɦiuədを表記している。白川学説では言葉がすっぽり抜け落ちている。それは形に意味があるとするので言葉が必要ではないからである。

字源は「立(イメージ記号)+人(限定符号)」と解析できる。立は両足を並べて立つ人の姿で、大地を踏みしめてしっかり立つというイメージである。liəpという語は文字通り「立つ」という意味と、「足場や根拠・基礎をしっかり定める」という意味がある。これをイメージ記号としてɦiuədという語の表記に用い、位が生まれた。「立+人」の組み合わせによって、人が就くべき場所、定められた座席の意味を暗示させることができる。