「雨」

白川静『常用字解』
「象形。天から雨の降る形。‘あめ、あめふる’ の意味に用いる」

[考察]
字源に関しては異説がない。しかし語源について触れないと漢字の説明としては不十分である。文字は言葉を表記する視覚記号であって、どんな聴覚記号が背景にあるのかを説明する必要がある。
雨は名詞と動詞の用法がある。
 原文:習習谷風 以陰以雨
 訓読:習習たる谷風 以て陰(くも)り以て雨ふる
 翻訳:吹きつのる谷の風 空はくもり雨が降る――『詩経』風・谷風

この雨は動詞に使われている。英語のrainが名詞と動詞に両用されるのと似ている。

「あめ」という現象を古人はどういう語感で捉えたのであろうか。『釈名』に「雨は羽なり」「羽は宇なり」とあり、雨は宇や羽と同源という意識があった。「宇は羽翼の如く、自ら覆蔽するなり」と述べているから、これらに共通するイメージは覆蔽(上から覆いかぶさる)であることが分かる。つまり「あめ」という現象を上(天)から覆いかぶさってくるものという語感で捉えていたと考えられる。日本の「あめ」はあめ(天)と同源らしい(『岩波古語辞典』)。しかし古典漢語の雨は「覆いかぶさる」という状態に重点を置く語のように見える。小雨はそんな感じではないが、どしゃぶりだと、「かぶさってくる」という感覚はありそうである。