「炎」

白川静『常用字解』
「会意。火を二つ重ねた形で、燃えさかる焰(ほのお)をあらわし、‘ほのお’の意味となる」

[考察]
形→意味の方向に説明している。つまり形から意味を求める方法である。これが白川漢字学説の特徴である。ここには言葉が抜け落ちている。言葉→意味→形の方向に説くのが漢字解釈の正道である。

炎は古典に使われる言葉(古典漢語)のɦiamを表記する視覚記号である。古典における炎の実例を見てみよう。
①原文:赫赫炎炎 云我無所
 訓読:赫赫たり炎炎たり 云(ここ)に我所無し
 翻訳:日はかっかと照りつけ燃えるよう どこにも落ち着く場所がない――『詩経』大雅・雲漢
②原文:田祖有神 秉畀炎火
 訓読:田祖神有り 秉(と)りて炎火に畀(あた)ふ
 翻訳:田の神様は不思議な力で [稲食い虫を]取って火にくべる――『詩経』小雅・大田

①・②とも火が燃え上がる意味である。②は燃え上がるほのおの意味とも取れる(「ほのお」は展開義である)。いずれにしてもɦiamは火が燃え上がる意味で、これを暗示させるために「火+火」の図形が考案された。