「鉛」

白川静『常用字解』
「形声。音符は㕣。‘なまり’ をいう」

[考察]
白川漢字学説では㕣を「神気が現れる」→「神意にそう」の意味とするから(沿の項)、「なまり」を説明することができない。漢字を会意的に説いて、形から意味を導くのが白川漢字学説の特徴である。
白川漢字学説では形声の説明原理がない。それは言葉という視点がないのと関わりがある。語の深層構造を捉え、語源を究明することが形声の基本である。

鉛の語源は何であろうか。古典に「鉛は循なり」とある。「ルートに従う」というのがコアイメージである。これは沿のコアイメージでもある。要するに鉛と沿は同源の語である。これらは㕣がコアイメージを表す基幹記号になっている。㕣については沿でも説明したように、くぼみから水が流れ出ることから発想されて、「一定のルート(筋道)に従う」というイメージが取られた。
古代に金・銀・銅・鉄などの金属は性質の特徴や用途などから命名された。「なまり」は用途と性質に絡めた命名がなされた。それはなまりが柔軟性をもつことと関係がある。「ルート・筋道に沿って流れる」というイメージのある㕣を用いて、「㕣エン(音・イメージ記号)+金(限定符号)」を合わせた鉛が造形された。加工する際に型に沿って流れる柔らかい金属を暗示させる図形となっている。