「塩」
正字(旧字体)は「鹽」である。

白川静『常用字解』
「形声。鹵は籠の形の器に塩を入れた形。音符は監。中国の河東の盬池コチでは多くの塩が採れたことから、盬池の鹵であるというので監の形を残したのかもしれない」

[考察]
盬は「古(コ)+鹽の略体」からできており、盬が鹽(しお)の字に由来するのであり、その逆ではない。盬池で塩が採れるから鹽が盬の字の一部を含むというのは間違いである。
白川漢字学説では形声の説明原理を欠くから、鹽の解釈はできない。 

『書経』に鹽梅(=塩梅)という語があるくらい、塩は非常に古い調味料である。古典漢語で塩のことを何と言ったか。カールグレン(スウェーデンの中国語学者)は 不明、藤堂明保はgiamとしている。監の音については両者ともkl~という複声母を想定している。そうすると鹽はgliamという音とも推定される。鹽は監を音符とする形声字というのが通説だが、筆者は「監(音・イメージ記号)+鹵(限定符号)」と解析する。
どうしてこんな記号が考案されたのか。『説文解字』がヒントを与える。そこでは「古者、沙に宿して初めて作り、海鹽を煮る」と記されている。砂浜で塩田を作り、海水を引き入れて天日で煮て塩にしたということであろう。つまり製造法から鹽の字ができたというものである。しかし監の説明がない。
監は詳しくは該項で 説明するが、鑑(かがみ)の原字で、「枠の中に収める」というイメージがある(238「監」を見よ)。海水を塩田に引き入れる情景はまさにそのイメージである。鹵はアルカリが点々と浮き出ている情景を描いた象形文字で、岩塩を表している。岩塩をlagといい鹵と表記され、海塩の鹽とは区別される。ただし鹽の図形では鹵は限定符号の役割をしている。