「花」

白川静『常用字解』
「形声。音符は化。もとの字は華で、花びらが美しく咲き乱れている象形の字である。のち形声の字が五世紀のころに作られたものと思われる」

[考察]
華は先秦(周代)の古典にあるが、花は六朝以後(五、六世紀)に出現する。なぜ華→花と字体が変わったのか。コアイメージが変わったのに応じて字体を変えることはよくある。それは別語になった(使い方が変わった)ということである。
白川漢字学説は形から意味を導く方法で、言葉という視点がないため、形声文字の説明原理をもたない。だから花の説明ができない(字源を放棄)。華も形声なのに象形としている。

なぜ字体が変わったかの検討をしよう。まず華である。草木の「はな」の捉え方(造形法)はその形態によって異なり、華のほかに栄・英などもあるが、華は ⁀形や‿形に大きく彎曲して開く特徴に着目して生まれた言葉である(124「華」を見よ)。一方、「はな」の生態的特徴に着目すると、はなはつぼみから姿を変えたものという捉え方が生まれる。かくて「化(音・イメージ記号)+艸(限定符号)」を合わせた花という図形が成立した。
化は「AからBに姿や性質を変える」というコアイメージがある(108「化」を見よ)。貨はA(貨幣)がB(品物)に変わる機能をもつことから名づけられた。鳥などを捕まえる囮(おとり)は分からないように姿を変えて設置したもの。靴は外来語だが、革という材質を変えて造られたものということから音意両訳の字が生まれた。正しい言葉の音声が変わったのが訛(なまり)である。このように化のグループは「姿を変える」というイメージが深層に脈々と流れている。つぼみが姿を変えたものを花と名づけ、これらの単語家族の一員としたのである。