「佳」

白川静『常用字解』
「形声。音符は圭。圭は上が円く下が四角の玉の名で、圭玉は任命されるときに諸侯に与えられるめでたい玉であった。圭はこの圭玉と関係があるので、佳とはよい人という意味になるのであろう」

[考察]
形から意味を導くのが白川漢字学説の方法である。すべての漢字を会意的に説く特徴がある。圭(めでたい玉)+人→よい人と意味を導く。
会意的に説くから、実体にこだわるという特徴もある。形声の原理は実体ではなく、形態や機能のイメージが重要である。語のコアイメージから漢字を造形するのが形声の原理である。

圭は「土」を二つ重ねただけの極めて舌足らず(情報不足)な図形であるが、重ねた土という意味ではなく、先端が∧形に尖った(上端が三角形、下端が四角形をなす)玉器の名である。実体ではなく形態に重点を置くと、「∧形をなす」というイメージに抽象化できる。∧(かど)のイメージは ∧∧∧の形では「ぎざぎざ」のイメージになるが、めりはりの利いた形でもある。∧の形は視点を変えれば、∠やᒣの形にも通じる。∠は「かど」「すみ」、ᒣは直角である。古代漢語においては「かど」や直角は美的によいというイメージを形成することがある。例えば義は∧∧∧(かど、ぎざぎざ)の形から「よい、正しい」の意味が生まれ、廉潔・清廉の廉(きちんとしたかどがある、正しい)は∠(かど)のイメージから生まれ、方正の方は四角形から「正しい」の意味が生まれた。古典漢語の使用者(古代中国人)の美的感覚ではこのように三角形や四角形に美(形の美)を見出す傾向がある。
形が整っている状態を∠・ᒣ・∧の形で表象することは古典漢語の習慣のようなものと考えてよい。したがって姿が整って美しいという意味をもつ古典漢語のkĕg(呉音はケ、漢音はカイ)が造語され、視覚記号として佳と造形された。佳は「圭(音・イメージ記号)+人(限定符号)」と解析する。「圭」は「∧をなす」というのがコアイメージである。だから佳は姿や形がきちんと整っている人という意匠になっている。この図形的意匠によって「姿がすっきりとして美しい」を意味するkĕgの表記としたのである。