「価」
正字(旧字体)は「價」である。

白川静『常用字解』
「形声。音符は賈。賈はものを売買するという意味の字であるから、價は賈の音と意味を含むと考えてよい。売買の“あたい、ねだん”、 またものの“価値、ねうち”をいう」

[考察]
價の篆文は後世追加されたもので、先秦時代には存在しなかった。ふるくは賈が値段を表していた。だから賈の字源を説明しないと、價の字源も完結しない。『字統』では賈の字源を「襾は覆うもの、貝は財貨。財貨を覆うのは商賈のこと」としている。

賈は「襾+貝」と分析できる。 襾アは下のものを上から覆いかぶせることを示す記号である(覆などに含まれている)。貝は財貨と関わることを示す限定符号。したがって「襾(音・イメージ記号)+貝(限定符号)」を合わせた賈は、財貨(商品)に覆いをかぶせる情景を暗示させる。これで何を表現したいのかと言うと、商売の二つの形式の一つを表そうとするのである。商売の二つの形式とは行商と店構えである。行商が古い形態で、これを表すのが「商」である。店を構えて商売するのは商よりも新しい。店や舗という漢字が出現するのはずっと後である。一定の場所で商品を貯えて売買する形態を表す語が「賈」である。だから商品をストックする状況を「賈」という図形で暗示させている。この意匠によって、一定の場所を構えて売買する行為を意味する古典漢語のkăgの視覚記号とした。kăgという語は家・仮と同音である。だからこれらは「上から覆いかぶせる」というコアイメージも共通である。更に下・夏・庫などとも同源で、大きな単語家族を構成する。
賈は取り引きをする人、また取り引きの値段という意味を派生した。そのため新しい表記が必要となり、「賈」に限定符号の「人」を添えた價が生まれた。ただし價は賈の一部の意味(値段、値打ちの意味)だけをカバーする。