「果」

白川静『常用字解』
「象形。木の上に実がついている形。木の実をいう」

[考察]
果については異説がない。白川漢字学説は字形から意味を導く方法なので、言葉が抜け落ちている。漢字の記述はまず言葉から出発すべきである。

木の実を古典漢語ではkuarという。この聴覚記号を視覚記号に切り換えて果という図形が生まれた。kuarという語の語源については藤堂明保の研究がある。藤堂は果のグループ(果・菓・踝・課・裹・窠・顆)、咼のグループ(渦・蝸)、禾のグループ(禾・和・委・萎・痿・倭)、臥、瓦、丸、元のグループ(元・玩・頑・冠・完・院)、原のグループ(原・愿・願)、亘のグループ(亘・垣・桓・宣)、夗のグループ(宛・盌・碗・腕・惋・怨・婉)、爰のグループ(媛)、袁のグループ(園・環・還)、巻のグループ(巻・拳・圏・捲・券・眷)、官のグループ(官・館・棺・管・菅)、員のグループ(員・円)、肙のグループ(蜎・絹)などが同源で、KUAR・KUANという音形と「まるい、とりまく」という基本義をもつという(『漢字語源辞典』)。このように多くの同源語を見出し、同じコアイメージのもとに統括したので見通しがよくなった。
すべての木の実が「まるい」というイメージがあるわけではないが、古典漢語の使用者は語源的に「まるい」のコアイメージをもつ仲間と見たわけだ。かくてkuarを表す視覚記号として「木」の上に〇の形(曰または田)をつけて「果」という図形が考案された。