「科」

白川静『常用字解』
「会意。禾は穀類、斗は容量をはかる量器であるから、ますなどの量器で穀物の量をはかることを科という」

[考察]
「禾(穀物)+斗(ます)」という舌足らず(情報不足)な図形から、「ますなどの量器で穀物の量をはかる」という意味を引き出した。そんな意味があるだろうか。古典に用例がない。用例がなければ意味とは言えない。

科は古典漢語k'uarの代替記号、禾はɦuarであるから、形声文字と見てよい。だから科を「禾カ(音・イメージ記号)+斗(限定符号)」と解析する。禾は作物の種子が丸く実って穂の垂れた形で、「丸い」というイメージや、「垂れ下がる」というイメージを示す記号になる。一方では、種子が生ることに焦点を置くと、「収穫、成果」というイメージを表すこともできる。 斗は量をはかる升のことだが、ものさし、尺度、基準と関わる比喩的限定符号になりうる。したがって科は、できあがったものを基準によって品分けする情景を暗示させる図形と解釈できる。この図形的意匠によって、質の違いで分けられる等級・クラスの意味をもつk'uarという聴覚記号を表記する。
古典に次の用例がある。
 原文:爲力不同科。
 訓読:力を為すに科を同じくせず。
 翻訳:力を発揮するには、人それぞれ等級の違いがある――『論語』八佾

文科、理科の科は質の違いで分けられる等級の意味である。金科玉条の科は罪の違いによって分けられる法律の条文の意味で、転義である。ここから罪・とがの意味(罪科・前科の科)が生じる。