「貨」

白川静『常用字解』
「形声。音符は化。化は二体の死者が横たわっている形で、変化するという意味があるので、交換できるという意味であろう。古くは貨幣として貝が使用され、貝貨という」

[考察]
二体の死者→変化する→交換できると意味を導くのが奇妙。化に交換できるという意味はない。限定符号の貝に重きを置いた説明になっている。

「貨は化なり」というのが古人の語源意識である。化は「別のものに変わる」というコアイメージを示す記号である(108「化」を見よ)。「AからBに姿を変える」と言い換えてもよい。「化(音・イメージ記号)+貝(限定符号)」を合わせた貨は、貝(昔の貨幣)を差し出すと、別の物に姿を変えて、手元に返ってくる情景を暗示させ、この図形的意匠によって、値打ちのあるもの(金銭や宝)を意味する古典漢語huarの視覚記号とした。『老子』に次のような用例がある。
 原文:難得之貨、令人行妨。
 訓読:得難きの貨は、人の行ひを妨げしむ。
 翻訳:手に入れにくい宝物は人にむちゃな行動をさせる――『老子』第十二章