「画」
正字(旧字体)は「畫」である。

白川静『常用字解』
「会意。聿と田とを組み合わせた形。聿は筆、田は周の最初の形で、周は四角の盾の形。画は盾に模様をえがく”こと、また画かれた“え”をいう」

[考察]
形から意味を導くのが白川漢字学説の特徴である。聿(筆)と田(四角の盾)を合わせた形から、盾に模様をえがくという意味を導く。形の解釈をストレートに意味とするから、余計な意味素が混入する。盾も模様も余計である。
字形から出発するのではなく、言葉から出発しなければいけない。それには古典で 畫がどんな意味で使われているかを調べる必要がある。『説文解字』などでは「畫は界(さかいをつける)なり」と意味を捉えている。『春秋左氏伝』には「畫カクして九州と為す」(九つの州に区切る)という用例がある。周囲を区切る(区切りをつる)が最初の意味である。
畫の解剖は難しいが、篆文を見ると、上部に「聿」、その下に「田」、さらに「田」の左右と上下に四本の線(縦線と横線)がついている(畫の異体字に𤰱がある)。結局畫は「左右上下の線で区切る形(イメージ記号)+聿(イメージ補助記号)+田(限定符号)」と解析できる。聿は筆であり、筆は書いたり区切ったりする道具なので、イメージを補助するための記号となる。田は田に関する場面を作り出すための限定符号である。かくて畫は田の周囲に区切りをつける情景を設定した図形である。この意匠によって、周囲を区切るという意味をもつ古典漢語ɦuĕkを代替する視覚記号とする。
絵画の画の意味は転義である。この意味では言葉の読みも変化する。ɦuĕkの語尾のkがgに変わり、ɦuĕg(呉音はグワ、漢音はクワイ)と発音される。なぜ「え」の意味になったのか。 周囲を区切ることから輪郭をつけて形をなすというイメージに転化し、何もない所に輪郭や図形をえがくという意味が実現され、えがく→え(絵)という意味に転じるのである。