「改」

白川静『常用字解』
「形声。音符は己。古い字形は攺に作り、これが改のもとの字であろう。攺は巳と攴とを組み合わせた会意の字。巳は蛇の形をした蠱というもので、他人にのろいをかけて災いを加えようとするときに使われた。これに攴を加えて打つというのは自分に加えられようとする災いを他に移し、変更しようとする一種のまじないであった。改めるというのは、もとはたたりを祓い清める儀礼をいった」

[考察]
白川漢字学説には形声の説明原理がない。漢字をすべて会意的に説くのが特徴である。改は古来形声文字とされているが、白川は己を音符としても説明ができないので、字体を攺に変え、巳から会意的に説明する。 しかし攺はイまたはシと読む字で、改とは全く別の字である。
改は己を音符とする形声文字である。ただし音符というのは発音符号ではない。発音符号とは音素文字において音素を表す記号である。漢字は記号素文字であって音素のレベルに分析せず、記号素の読みを暗示させる記号を含む。この記号は単に音を暗示させるだけではない。重要な機能は語のコアイメージを暗示させることである。だから音符という用語は相応しくなく、音・イメージ記号と呼ぶべきである。
改では己が音・イメージ記号であり、これが深層構造をなす基幹記号である。「己」についてはその項で詳しく述べるが、「伏せたものが起き上がる」というコアイメージがある(497「己」、273「起」を見よ)。伏せたものはへたりこんだ状態、たるんだ状態である。それが起き上がるとしゃんとなって引き締まる。だから「ぴんと立ち上がる」→「たるみを引き締める」というイメージが生まれる。「己(音・イメージ記号)+攴(限定符号)」を合わせた改は、たるんだものをもう一度立ち上がらせてしゃんとさせるという状況を暗示させる。この図形的意匠によって、「古くだめになったものをもう一度立て直す(新しいものに変える、あらためる)」「今までの姿が変わる(あらたまる)」を意味する古典漢語kəg(呉音・漢音はカイ)を表記する。
具体的な用例は次の通り。
 原文:緇衣之宜兮 敝予又改爲兮
 訓読:緇衣の宜しき 敝(やぶ)れなば予又改め為さん
 翻訳:黒い衣がよく似合う 破れたら私がまたお直ししましょう――『詩経』鄭風・緇衣