「外」

白川静『常用字解』
「会意。夕は肉の形で、卜は占い。亀のことを外骨といい、鼈(すっぽん)のことを内骨という。亀の肉を外してその腹甲をとり、これを卜うときに使った。肉はまた月の形にかき、“ころす、けずる” という意味がある。外は亀の甲羅を使う占いに用いる語であったが、のち内外の“そと”の意味に用いる」

[考察]
この説明からは「外」の意味がわからない。夕(肉)+卜(占い)→卜うとき亀の肉を外す→はずすという意味なのか。そうすると「はずす」と「そと」はどういう関係なのか。
もう一つの解釈も提示している。月(ころす、けずる)+卜(占い)→?

字形から意味を求めるのが白川漢字学説の特徴である。しかし「夕+卜」の会意からは合理的な説明が難しい。会意ではなく形声と見る説(カールグレン、加藤常賢、藤堂明保など)が妥当である。「月(音・イメージ記号)+卜(限定符号)」と見る。夕と月は形が同じで、ともに三日月の図形であるが、月は「欠ける」というイメージを示す記号となる(456「月」を見よ)。これは「えぐり取る」というイメージにも転化する。月は欠・抉(えぐる)・闕(かける)などと同源である。卜は占いだが、意味とは直接関わりがなく、占いの場面に設定するための限定符号である。
月は欠けるものである。だんだんと欠けて三日月になる。その形態は中身が欠けて、そと枠の弦だけが残ったような姿を呈する。占いの場面にも同じような状況がある。亀占いでは亀の腹甲に焼け火箸を差し込んで、ひび割れを造る。中身が抉られ、そと側にひびが生じる。このように占いの場面を設定することによって、「中身を抉った後に残るそと枠」というイメージを作り出すのである。この図形的意匠によって、「そと」を意味する古典漢語nguad(呉音ではグヱ、漢音ではグワイ)を表記する。外とはある範囲のそと側の意味である。内(ある範囲のうち側)と対になる語である。ある範囲を〇で示すと、内側を除いた枠のそと側が外である。だからある範囲から除く、つまり当面する物事からそとに出す(はずす)という意味にも展開する。