「街」

白川静『常用字解』
「形声。音符は圭。圭は土を長方形の土板の形とし、その上に占いの結果をかいた。通路はその土板のように整然と区画されるので、そのように造られた道路を街道・街路という。“よつまたのみち、みち、まち、ちまた” の意味に用いる」

[考察]
長方形の土の板とはどんなものか。粘土を固めて▭の形や▯の形に造ったものだろうか。その上に占いの結果を書くというのが分からない。文字は普通は木や竹の札、布に書くものであろう(紙はまだ発明されていない)。
▭の形や▯の形に区画された道路というのも変。道路を縦横に通すと▭の形や▯の形になるということではなかろうか。そうするとこれは道路ではなく、区画された「まち」であろう。
白川漢字学説は字形から意味を導く方法である。しかし意味は字形にあるのではなく、言葉にある。古典における街の用例を見てみよう。
 原文:棄灰於街、必掩人。
 訓読:灰を街に棄つれば、必ず人を掩ふ。
 翻訳:灰を通り道に捨てると、必ず人にかぶさってしまう――『韓非子』内儲説上

街は通り道の意味で使われている。一般の「みち」ではなく、町並みを区切る道である。 これを古典漢語ではkuĕg→kăi(呉音ではケ、漢音ではカイ)といい、街という視覚記号で代替する。
街は「圭(音・イメージ記号)+行(限定符号)」と解析する。圭は⌂の形をした玉器の名である。土を上下に重ねた図形だが、土とは関係がない。圭は先端が尖っている形態から∧の形というイメージを示す記号である115「佳」を見よ)。∧はかどのある形で、⏋の形、 ⎾の形、⏌の形、⎿の形のイメージにも転化する。⏋と⎾を合わせれば⊤の形、⏌と⎿を合わせればの⊥の形にもなる。町並みを区切るとこれらの形が生じる。これが町中を通る道の形状である。また行は十字路の形で、歩行や道と関係があることを示す限定符号である。かくて「圭(音・イメージ記号)」に行を添えた街でもって、町中を通る道を意味するkuĕgを表記した。