「該」

白川静『常用字解』
「形声。音符は亥。説文に“軍中の約なり” とあって、軍中の約束ごとの意味であるとするが、そこから“そなわる、かねつつむ”の意味が生まれたのであろう」

[考察]
白川漢字学説には形声を説明する原理がない。すべての漢字を会意的に説くのが特徴である。本項では亥の解釈ができないので、字源の探求を放棄している。
では該をどう見たらよいか。字源の前に語源、語源の前に実例に当たるべきである。古典では次の用例がある。
 原文:不該不徧。
 訓読:該せず徧せず。
 翻訳:[能力や知識が]広く行き渡っていない――『荘子』天下

該は欠け目なく全部がそなわる(広く行き渡る)という意味で使われている。該博の該はこの意味である。また、全体がそなわってぴったり一致することから転じて、ちょうど当てはまってずれがないという意味になる。該当の該はこれである。
該の字源は「亥(音・イメージ記号)+言(限定符号)」と解析する。亥は獣の骨格の形で、「全体に張り詰める」「固く引き締める」というイメージを示す記号とされる(169「劾」を見よ)。言は言語行為と関わる場面を設定するための限定符号である。したがって該はたるみを引き締めるため命令を全体に行き渡らせる状況を暗示させる。この図形的意匠によって、「全体に行き渡る」を意味する古典漢語kəg(呉音・漢音ではカイ)を表記する。